歯周病・歯を失う原因の第1位
CMなどでも最近よく耳にする歯周病。歯周病とはどのような病気なのでしょうか?
歯周病とは,歯肉や歯槽骨(歯を支えている骨)といった歯周組織に発症し, 歯周組織を破壊する病気の総称です。
大きく分けて歯周病の中には
①歯肉炎
②歯周炎
③咬合性外傷
という病気があります。
健康な歯肉には, 歯との間に通常深さ2 mm程度の溝があります。これを「歯肉溝」と呼びます。この溝が3 mm以上深くなると「歯周ポケット」と呼ばれ, 歯肉溝とは区別されます。歯周ポケットは歯と歯茎の境目(歯頸部)にプラークが付着することによって炎症が起き, 歯と接着していた歯肉が壊されることで生じています。また, 炎症が生じているので歯肉は腫れたり赤くなったりします。さらに悪化すると骨が溶け, 歯が揺れてきたりします。
歯を失う原因の第一位は歯周病
人が歯を失う原因はなんだと思いますか?虫歯でしょうか?実は, 抜歯の原因の37%を占める第一位は歯周病です。ちなみに虫歯(う蝕)は第二位, 第三位は破折(歯が折れること)です。
歯周病の原因
歯周病の原因はプラークと呼ばれる歯に付着した細菌の塊です。細菌の種類や量と生体の免疫システムの不均衡によって歯周病は発症・進行します。つまり, 喫煙, ストレス, 食事内容などの不規則な生活習慣によっても歯周病は進行するのです。
特に喫煙は歯周病を進ませるだけでなく, 歯周病やインプラントといった治療の効果をも減少させます。
主な歯周病の種類と症状
歯周病には大まかに前述の3つの病態があります。
1. 歯肉炎 gingivitis
歯肉炎とは歯肉に限局した炎症のことです。歯周ポケットが3 mm以上あるけれど歯肉と歯との付着は破壊されておらず, 骨は溶けていない歯肉の状態を指します。つまり比較的軽度の歯茎の炎症です。
2. 歯周炎 periodontitis
歯周炎は歯肉に起きた炎症が骨や歯表面と歯肉の付着部位にまで広がった状態です。炎症がさらに進むと歯が揺れてきたり, 細菌代謝物による特有の口臭が生じたり, 膿が溜まって歯肉に膿の袋(歯周膿瘍)ができたりします。
3. 咬合性外傷 occlusal trauma
咬合性外傷とは噛み合わせの力によって起きる歯周組織の破壊です。歯肉に炎症がないのに歯が揺れてくるのが特徴です。痛みが出ることもあります。舌や強粘膜に圧痕がついたり, 下顎の内側に骨隆起と呼ばれる骨の隆起が認められれば咬合が強いサインです。歯並びやブラキシズム(歯ぎしり)が原因で単独で起きることもありますが, 歯周炎が重度になってきて咬合性外傷を併発することも多くみられます。この状態を歯二次性咬合性外傷といいます。
お口の健康は全身の健康を守る
糖尿病が歯周病になりやすくなる因子であるのと同時に, 歯周病は糖尿病の血糖コントロールに影響を及ぼすことがわかっています。これは歯周病により活性化された単球が脂肪組織でTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生を促進し, インスリンの細胞内シグナル伝達を阻害するからです。同様に, 歯周病は炎症性サイトカインの産生を促進することで糖尿病だけでなく動脈硬化や虚血性心疾患さらには低体重児出産や早産にも影響をもたらすことがわかっています。つまり, お口の中の状態を衛生的に保つことは重篤な病気の悪化を防ぐことにもつながるのです。
口腔ケアの重要性
どこの歯科医院でも口を酸っぱくして「クリーニングに来てください」と言います。それはプラークや歯石の付着を常態化させたくないからです。残念ながら一度歯周病で失われた骨や歯茎は特別な処置をしない限り二度と元には戻りません。(特別な処置をしたからといって必ず元に戻る保証もありません。)だからこそ歯周病が重篤化する前に原因を取り除きたいのです。
それと同時に来院から次の来院までのご自宅での歯磨きやフロスといった日々のセルフケア, 生活習慣も非常に重要です。歯並びや歯の状態, 糖分の摂取状況などは患者さんによって様々なので, 適切な歯磨きの方法も人によって変わってきます。当院では日々知識をアップデートしている,話しやすい衛生士, ドクターが多数在籍しており, 歯磨き指導から生活習慣に関するご相談まで承っておりますので気軽にご相談ください。
次回は歯周病の治療の流れをご説明できたらと思います。
参考文献
・第2版臨床歯周病学 医歯薬出版株式会社
・株式会社モリタビバリーくんのフリー素材集