歯周病治療の流れ・口腔状態の把握と治療のステージ

歯周病とは

歯周病(periodontal disease)とは、 歯周組織に発症し、 歯周組織を破壊する疾患の総称であると以前ご説明しました。
今回はその「歯周病」の治療の進め方についてご紹介していきます。

前回のブログ・歯周病・歯を失う原因の第1位

歯周病治療の流れ

初めて来院された時、「たくさんの検査や型取り、レントゲン撮影をして、その割にはすぐに歯を削ったりしてもらえなくてせっかく来たのに随分時間がかかるなぁ」と思ったことはありませんか?
しかし、歯科医院にかかる際に実はこの日が一番重要なのです。なぜならばこの時に主訴(患者様の一番のお困りごと)を聞き、各種検査や全身状態の把握を行なって、私たち歯科医師は一旦情報を持ち帰り、整理し、どこからどのように治療していくかの計画を立て、次回ご来院時にご提案させていただく日だからです。
もちろん、 患者様の強い訴えや、激しい痛みがある場合などは必ずしもこの限りではありませんが、一般的にはこの日に得たお口や全身の総合的な情報をもとに今後の治療方針が決まっていく大事な日なのです。
その上で後述する歯周基本治療を開始し、 治療効果を再評価し、 歯周ポケットが残存している場合は再度徹底した基本治療をするか外科治療に進むかを決めます。
その後再び再評価を行い、ポケットの除去が認められ、 歯周状態が安定していれば他の1本1本の歯の治療やSPT(supportive periodontal therapy)へと移行します。

歯周病のための検査

歯周病治療 検診 クリーニング

正しい診断と適切な治療計画を立てる上での重要な情報を得るために主に以下の8つの項目を確認し、そのために必要な検査を行います。

口腔衛生状態の把握

ご自身でのプラークコントロールの状態を確認します。

歯肉の炎症

歯茎からの出血がないかで炎症の有無を確認します。
出血は歯茎に現在進行形の炎症を示唆します。

アタッチメントレベル

CEJ(エナメル質とセメント質との境目)からポケット底部までの距離。
これが大きいと歯周ポケットが深いことになります。

動揺度

歯の揺れは骨の溶け具合や病的な噛み合わせを示唆します。

咬合検査(歯列全体の咬合関係・早期接触の有無)

歯の揺れやプラークの停滞につながるような歯並びや噛み合わせがあるかを見ていきます。

プラークリテンションファクター

歯石・ 形の合っていない(辺縁不正な)充填など長期的に存在することにより歯周病が進行していく要素の有無を確認します。

X線

歯槽骨の高さ(骨が溶けていないか)、歯根膜腔の拡大(歯が骨としっかり繋がっているか)、歯槽硬線の消失や肥厚(骨への炎症の波及)、その他虫歯や根尖病巣の有無を確認します。

口腔内写真

口腔内の状態を視覚的に認識すると共に、患者様へのプラークコントロールの説明やモチベーションアップにつながる資料となります。

上記の検査結果をもとに診断(歯肉炎 or 歯周炎 or 咬合性外傷・全身性因子の関係の有無)を行うい、この診断結果に最も適した治療計画を立案していきます。

当医院の歯周病治療のページ

歯周病治療の各ステージ

歯周病治療 SPT 歯石とり

歯周病治療には一連の流れがあります。
どのような病態でもまずは歯周基本治療と呼ばれる原因の直接的な除去から行なっていきます。

歯周基本治療

いわゆる「クリーニング」と「歯石取り」のことです。
目的は、 歯周病を引き起こす「原因の除去」すなわち細菌叢を物理的に取り除くことです。
具体的には超音波の機械や鎌のような器具で歯茎の上、歯茎の中のプラーク及び歯石の除去をします。

咬合性外傷の場合

咬合性外傷の場合は、 この段階では外傷性咬合(為害性のある噛み合わせ)の除去を目的として噛み合わせの調整を行います。

歯周外科治療

歯周外科治療の目的は「歯周組織の再生」です。
具体的にはポケットを浅くしたり、骨の新生を目的とした外科的・観血的な処置を行います。

口腔機能回復治療

口腔機能回復治療とは噛み合わせの回復を目的とした治療のことです。
具体的には歯周組織が健全な状態になったところで、被せ物やインプラント、入れ歯などを入れてしっかり噛めるようにする処置を行っていきます。

メインテナンス/SPT

メインテナンスとは歯肉溝が正常に戻った患者様を対象とする処置のことであり、SPTとは一部に4 mm以上の歯周ポケットが残存した状態だが、病状が安定している患者様に対して行う処置のことです。
ともに目的は歯周病の再発や進行を防止し、 口腔の健康を維持するためのクリーニングです。
これは一番初めに行った歯周基本治療と処置内容はほとんど同じですが、 意義が異なります。

終わりに

歯周病とは、 完治の難しい病気です。
失った骨はもとには戻りません。
従って治療は病気の進行の予防に主眼を置いて、 途切れさせるることなく一連の流れ(学会で定められているガイドライン)に沿って行なっていくことになります。
歯周病の治療は劇的な変化がないので、 一見すると治療の効果がわかりにくく、 ただのお掃除と思われがちです。
しかし、 全ての歯科治療においての土台となるのが歯周病の管理であると言えます。
どんな美しい補綴物(詰め物や被せ物)も土台がぐらぐらしていては被せる価値はありません。
なので、 一見地味な歯周病治療・予防には大切な意味が隠れているのです。

参考文献

臨床歯周病学 歯科衛生士 クリーニング

第2版 臨床歯周病学 医歯薬出版株式会社

当医院の衛生士のサイト

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