基礎疾患をお持ちの患者様の歯科治療について③虚血性心疾患
虚血性心疾患
虚血性心疾患とは、冠動脈が狭窄・閉塞し、心臓に届く血液が減少する疾患の総称です。これに該当する疾患は、狭心症と心筋梗塞です。
冠動脈の狭窄・閉塞での原因で最多なのは、動脈硬化です。
これは主に、血管壁に酸化コレステロールがたまり、アテローム(粥種)が形成されることにより生じます。
アテロームが破れると、その部位に血栓が生じます。
アテロームや血栓により、冠動脈が狭窄するのが狭心症、血栓により冠動脈が完全に閉塞することで生じるのが心筋梗塞です。
動脈硬化の危険因子
コントロール不可能なもの
・年齢 ; 高齢 > 若年
・性別 ; 男性 > 女性
・遺伝 ; ( 動脈硬化の家族歴 )
コントロール可能なもの
・生活習慣;喫煙、肥満、運動不足、ストレス
・疾患;高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症
虚血性心疾患患者の歯科治療上の注意点
心筋梗塞発症後1か月以内の患者、ニトログリセリンが無効な重症狭心症患者の場合は、歯科治療は行えません。
また、侵襲性の大きな口腔外科手術などは、発症後3か月以内は控えた方がよいです。
歯科治療時には、なるべく頻脈にさせないようにする必要があります。
抗血栓薬を服用している場合には、術後の出血に注意します。
抗血栓薬 ☆は経口投与
・抗血小板薬 (動脈系血栓症に適応;狭心症、心筋梗塞)
;☆アスピリン
・抗凝固薬 (静脈系血栓症に適応;心房細動、深部静脈血栓症)
;☆ワルファリン、ヘパリン、☆ダビガトラン、フォンダバリヌクス、☆アピキサバン など
抗血栓薬服用の場合、術前にどの程度血が止まりにくいかを確認(モニタリング)する必要があります。
抗血栓薬が適切に使用されていて、モニタリングで明らかな異常を示していない限り、歯科治療前に抗血栓薬の休薬はしません。
その代わりに局所止血を確実にします。確実な縫合、術後のガーゼ圧迫止血、止血シーネの使用、局所止血剤による塞栓法(酸化セルロース、吸収性ゼラチンなど)を行います。
モニタリングの指標
・アスピリン;出血時間
・ワルファリン;PT-INR
・ヘパリン;APTT
歯科治療の前には、患者様の体調や服薬状況をお伺いしそれに合わせた治療方法や治療期間をご提案致します。
歯科治療中も、体調に配慮しながら進めていきます。
また、少しでも緊張感を和らげてリラックスしていただけるように心掛けています。歯科治療に関して不安なことがありましたら、お声がけ下さい。
歯科医師 山田