うちの子の下の前歯がガタガタだけど大丈夫ですよね?
乳歯が生えそろう5歳ほどまでは歯並びが問題なかったけれど、下の歯のガタガタが気になり相談に来られる方は多くいらっしゃいます。
結論は、これからの成長によって歯並びがよくなることはありません。その理由は骨の成長する方向が関係しています。
上の図は下のあごの成長方向を示しています。下あごの成長は歯が生えない後ろの立ち上がっている部分(下顎枝)で大きく見られますが、歯が生えてくる部分の成長はあまり起こりません。下あごの成長によって生まれる前歯のスペース(犬歯間幅径)は平均1.12mmとわずかです。
さらに第一大臼歯(6歳臼歯)が生えてくると歯の萌出スペースは減少します。それは第一大臼歯の萌出により永久歯が押され、リーウェイスペースが失われることで起こります。
●リーウェイスペース(leeway space:Leeway=ゆとり・余裕)とは?
「乳歯C .D.Eの幅の合計」と「永久歯3.4.5の合計」の差=「リーウェイスペース」と言います。
上下ともに永久歯3.4.5よりも乳歯C .D.Eの方が大きく上顎では0.78mm下顎では3.01mmと言われています。リーウェイスペースがある目的は6歳頃に萌出する第一大臼歯が生えてくることで乳歯を押して永久歯の萌出スペースを減らすことを避けるために元々備えられているスペースです。
以上のことから成長により歯の萌出スペースが大きくなると考えられがちですが、実際は萌出スペースは小さくなるため成長による叢生の改善は難しいと考えられます。
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小児期の矯正治療とは?
矯正治療は成人をイメージされますが、現在では小児期の患者様も多くいらっしゃいます。成人の矯正は「歯を動かす」イメージですが小児矯正は「顎の成長を促す」ことがベースになります。顎の発育を促すことで歯を並べるスペースを作ることで大人の矯正では抜歯矯正を避けて正常咬合へ誘導することが可能になります。また小児期は骨が柔らかいため歯の動きがスムーズで痛みが軽く矯正を進めていくことができます。
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矯正以外にできること
1:アイスの棒
小児矯正を始める時期は8歳〜9歳ごろがスタート時期になります。その年齢になる前に明らかな歯列不正がある場合は、家でできるトレーニングを行う場合もあります。一つは、アイス棒のトレーニングです。これは前歯の永久歯が生えてきた時期に下の歯が上の歯の内側に入っていない受け口の子に行います。前歯でアイスの棒を噛んでもらい上の前歯を外側に、下の前歯を内側に入るようにクセづけしていくことで改善していくこともあります。
2:正しいベロの位置を癖づける
正しいベロの位置は上顎の前歯の裏。これは成長期に上顎が前に成長し呼吸を促がす目的があると言われています。しかしベロが下がってしまうと、上顎の成長の促しがなくなって呼吸が難しくなることも考えられます。正しいベロの位置を意識つけましょう。
歯科医師 木村采香