基礎疾患をお持ちの患者様の歯科治療について④心臓弁膜症と感染性心内膜炎
心臓弁膜症と感染性心内膜炎の歯科治療上の注意点
心臓弁膜症
心臓弁膜症とは、心臓の弁(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、肺動脈弁)に異常が生じ、血流が正常にうまく流れなくなる疾患のことです。
弁がうまく開かず血液の流れが妨げられる狭窄症と、弁が完全に閉じず血液が逆流する閉鎖不全症の2種類があります。
大半は、僧帽弁と大動脈弁に生じます。
近年、動脈硬化による弁の変性や石灰化で生じるケースが多くなり、高齢者に増加傾向となっています。
また、心臓弁膜症の重症例の場合、外科治療の一つに人工弁置換術があり、術後にワーファリンカリウムの投与が行われているため
観血的歯科治療時の出血傾向に注意します。
心臓弁膜症の患者は、感染性心内膜炎を合併する恐れがあり
(特に、血液の逆流を伴う僧帽弁閉鎖不全症と大動脈閉鎖不全症は、感染性心内膜炎のハイリスク群とされています)
観血的歯科治療の際には、抗菌薬の予防投与を要します。
感染性心内膜炎
感染性心内膜炎は、本来無菌状態である心臓の内側(弁膜、心内膜、大血管内膜)に細菌などの病原性微生物による疣腫が形成され、
弁の破壊、塞栓症や全身の合併症をきたす重篤な全身疾患です。
1、どのような患者が感染性心内膜炎を発症しやすいか
①高度リスク群(感染しやすく重症化しやすい)
・人工弁置換術患者
・感染性心内膜炎の既往を有する患者
・複雑性チアノーゼ性先天性心疾患(Fallot四徴症など)
②中等度リスク群(必ずしも重症とはならないが、発症の可能性が高い)
・ほとんどの先天性疾患(心房中隔欠損症は除く)
・後天性弁膜症(特に、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈閉鎖不全症)
・閉塞性肥大型心筋症
・弁逆流を伴う僧帽弁逸脱
・人工ペースメーカー、植込み型除細動器などのデバイス植込み患者
参照)感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン;日本循環器学会
2、どのような歯科医療が感染性心内膜炎のリスクとなるのか
抜歯などの観血的歯科治療、歯周ポケット検査、SRP、歯肉圧排、
抜髄・感染根管治療など~医原性菌血症
1該当患者に、2に該当する歯科治療を行う場合には、必ず抗菌薬の予防投与が必要となります。
(抗菌薬は、ペニシリン系・セフェム系・マクロライド系などを使用)
歯科治療時の抗菌薬予防投与以外に以下の点にも注意します。
・歯科治療前のポピドンヨードを用いた口腔内洗浄
・定期的な歯科受診
・正しい口腔ケアの指導
歯科治療の前には、患者様の体調や服薬状況をお伺いしそれに合わせた治療方法や治療期間をご提案致します。歯科治療中も、体調に配慮しながら進めていきます。また、少しでも緊張感を和らげてリラックスしていただけるように心掛けています。
歯科治療に関して不安なことがありましたら、お声がけ下さい。
歯科医師 山田