16歳八重歯の非抜歯ワイヤー矯正 症例
今回は八重歯が気になって、矯正を行った方の症例になります。
八重歯による歯列不正とは
八重歯による歯列不正について
八重歯は、特に日本では「かわいい」という印象を持たれることもありますが、これは歯科医学的には歯列不正の一種であり、様々な問題を引き起こす可能性があります。八重歯とは、犬歯(前から数えて3番目の歯)が歯列から飛び出して生えている状態を指します。通常、犬歯は永久歯の中でも比較的遅く萌出する歯であり、その頃には他の歯がすでに萌出し、十分なスペースが残されていない場合に、歯列の外側(唇側)や内側(舌側)に追い出される形で生えてきてしまいます。
八重歯ができる主な原因
八重歯ができる原因は多岐にわたりますが、主に以下の要因が挙げられます。
- 顎の成長不足と歯の大きさのアンバランス: 現代人の食生活の変化により、顎の骨の成長が不十分になりがちです。一方で歯の大きさは遺伝的に決まるため、顎の大きさと歯の大きさのバランスが取れていない場合、すべての歯がきれいに並ぶスペースが不足し、特に萌出が遅い犬歯が押し出されて八重歯になります。
- 乳歯の早期喪失・晩期残存: 乳犬歯が本来抜ける時期よりも早く抜けてしまうと、奥歯が前に移動してしまい、永久犬歯が萌出するスペースがなくなります。逆に、乳犬歯が長く残りすぎると、永久犬歯が正しい位置に萌出できず、八重歯になることがあります。
- 遺伝的要因: 歯の大きさや顎の形は遺伝の影響も大きいため、親族に八重歯やその他の歯列不正がある場合、本人も八重歯になりやすい傾向があります。
- 舌癖や口呼吸: 舌を突き出す癖や口呼吸が習慣化していると、歯列に不適切な力が加わり、歯並びを乱す原因となることがあります。
八重歯が引き起こす問題点
八重歯は単なる見た目の問題だけでなく、口腔機能や全身の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
- 清掃性の悪化と虫歯・歯周病のリスク増加: 八重歯は歯列から飛び出しているため、歯ブラシが届きにくく、プラーク(歯垢)が蓄積しやすくなります。これにより、虫歯や歯周病のリスクが格段に高まります。特に、八重歯と隣接する歯の間や、八重歯の裏側などは磨き残しが多くなりがちです。
- 口内炎や口唇の損傷: 突出した八重歯が常に唇の内側や頬の粘膜に接触することで、口内炎ができやすくなったり、粘膜を傷つけてしまうことがあります。
- 咀嚼機能の低下: 歯列が乱れることで、食べ物を効率よく噛み砕くことが難しくなり、咀嚼機能が低下します。これは消化器への負担にもつながりかねません。
- 顎関節への影響: 悪い噛み合わせは、顎関節に不必要な負担をかけ、顎関節症を引き起こす可能性があります。顎関節症の症状としては、顎の痛み、口を開けにくい、顎から音がするなどがあります。
- 審美性の問題: 八重歯は、人によっては見た目を気にする大きな要因となります。笑顔になった際に歯列の乱れが目立つことで、自信を失うことに繋がるケースもあります。
八重歯の治療
八重歯の治療は、主に歯科矯正によって行われます。子供のうちは顎の成長を利用した矯正治療が可能であり、大人の場合でも様々な矯正装置を用いて歯を正しい位置に移動させることができます。抜歯の必要性や治療期間は、八重歯の状態や顎の状態によって異なりますが、専門医による診断と治療計画が不可欠です。
症例ケース(叢生)
- 年齢:10代
- 性別:女性
- 主訴:上の八重歯が気になる
- 診断:叢生+八重歯の転位
- 治療方法:ブラケット矯正(上下顎)
- 治療期間:2年(通院24回)
- 治療料金:約73万円(基本料金+毎月調整費+リテーナー費)税込
- リスク・副作用:歯を動かす際に違和感や多少の痛みを伴うことがある。矯正装置を装着するため、虫歯や歯肉炎になるリスクが少々高まる
初診時の写真

左上の前から2番目の歯の真上に八重歯(犬歯)がいるのが分かります。
この歯を抜くのを昔他の歯医者さんで勧められたとのことで、どうしたら良いのか
で相談にきました。上の歯並びも少し狭く重なりがあり、下の前歯も重なりがあるので、抜かないで矯正で治すことを説明し
矯正がスタートしました。
矯正開始から半年

上下でワイヤーをつけて、歯並びを広げて八重歯が入る隙間を作っていきました。
ガタガタはまだあるものの、歯の重なりは無くなったことが分かります。
矯正開始から1年半

矯正開始から1年半が経ちました。
歯並びはほとんど綺麗になりました。まだ左上2番目の歯が少し中に入っているのが気になるので
もう少し矯正をやっていくことになりました。
矯正2年経過、終了の写真

左上の前歯の凹みもほとんど気にならなくなり、上も下もきれいに治せることができました。
今回のようにかなり難しい症例でも、非抜歯矯正が適応になることもあるのでぜひご相談ください。
医院長 岡本







