歯を抜かない矯正の費用相場と選ぶべき症例とは

歯を抜かない矯正治療の魅力とは?

「歯を抜かなければ矯正できない」と言われて諦めていませんか?

矯正治療というと、多くの方が「歯を4本抜く」というイメージを持っているかもしれません。確かに従来の矯正治療では、歯並びを整えるスペースを確保するために、小臼歯を抜くことが一般的でした。しかし近年では、歯科医療技術の進歩により、「非抜歯矯正」という選択肢が広がっています。

非抜歯矯正とは、その名の通り歯を抜かずに行う矯正治療です。患者さまの多くは「できるだけ自分の歯を残したい」という希望を持っています。永久歯は一度失うと二度と生えてこないからこそ、可能な限り抜歯を避けたいと考えるのは自然なことです。

私は平成2年に広島大学歯学部を卒業し、長年にわたり矯正治療に携わってきました。その経験から言えることは、非抜歯矯正は単に「歯を抜かない」というだけでなく、患者さまの健康や見た目、将来の生活にさまざまなメリットをもたらす可能性があるということです。

今回は、非抜歯矯正の費用相場から適応症例、そしてメリット・デメリットまで、臨床経験豊富なドクターの視点から詳しく解説していきます。

非抜歯矯正の費用相場はどれくらい?

矯正治療を検討する際、気になるのは費用ではないでしょうか。

非抜歯矯正の費用相場は、一般的に100万円程度と言われています。これには診断料、初回の装置料、調整料、経過観察料、そして最後のリテーナー(保定装置)に関する費用が含まれます。診断料は矯正を始める前の精密検査やプランニングの際に発生し、通常2万円から5万円程度です。

ただし、矯正装置の種類やクリニックの地理的条件によって費用は大きく変動します。特に都内の矯正歯科では、全体のコストが100万円を超えることも珍しくありません。

非抜歯矯正と抜歯矯正を比較すると、一般的に非抜歯矯正のほうが治療期間が短くなる傾向があります。これは抜歯後の治癒期間が不要であることや、歯の移動距離が比較的少なくて済むことが理由です。治療期間が短ければ、通院回数も少なくなるため、調整料などのコストを抑えられる可能性があります。

当院では、非抜歯矯正の費用を抑えるための工夫として、分割払いやクレジットカード払いにも対応しています。

費用面で不安を感じる方は、複数の歯科医院で相談することをおすすめします。その際、単に「安いから」という理由だけでなく、医師の経験や実績、使用する装置の種類なども総合的に判断することが大切です。

非抜歯矯正が向いている症例とは?

「私の歯並びは非抜歯矯正で治せるの?」

これは多くの患者さまが抱く疑問です。非抜歯矯正が適応となるのは、主に以下のような症例です。

軽度から中等度の叢生(歯のガタガタ)

歯と歯が重なり合う状態を「叢生(そうせい)」と言います。叢生が軽度から中等度であれば、歯を抜かずに矯正できる可能性が高いです。特に、顎の骨に十分なスペースがある場合や、歯の側面を少し削ることで必要なスペースを確保できる場合は、非抜歯矯正の良い適応となります。

小さな空隙(すきっ歯)

歯と歯の間に小さな隙間がある場合も、非抜歯矯正の良い適応です。この場合、空いているスペースを利用して歯を移動させることができます。

軽度の出っ歯

上の前歯が前に出ている「上顎前突」の症例でも、程度が軽ければ非抜歯で対応できることがあります。特に、下の顎を前に出す成長の余地がある若い患者さまや、上の奥歯を後ろに下げるスペースがある場合は、非抜歯矯正が検討できます。

一方で、以下のような症例では、抜歯矯正が必要になる可能性が高くなります。

  • 重度の叢生(歯が著しく重なっている)
  • 重度の上顎前突(出っ歯)で、口元の突出が気になる場合
  • 顎の大きさに対して歯が明らかに大きすぎる場合
  • 顎の骨格的な問題が大きい場合

非抜歯矯正が可能かどうかは、レントゲン写真や歯型、顔の写真などを用いた詳細な検査と診断が必要です。当院では、歯科用CTを導入し、より精密な診断を行っています。

あなたの歯並びはどのタイプでしょうか?

非抜歯矯正のメリットとデメリット

非抜歯矯正には、さまざまなメリットがあります。しかし、すべての症例に適しているわけではありません。ここでは、メリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。

非抜歯矯正の主なメリット

まず、非抜歯矯正の最大のメリットは、健康な歯を残せることです。永久歯は一生使う大切な資産です。抜歯すると、その歯が担っていた咀嚼機能も失われてしまいます。

次に、治療期間が比較的短いことも大きなメリットです。抜歯矯正では、抜歯後の治癒期間や、抜歯部分のスペースを閉じるための時間が必要になります。非抜歯矯正ではこれらの過程が不要なため、治療期間が短縮されることが多いのです。

また、顔の輪郭への影響も考慮すべき点です。抜歯矯正では、歯を後方に引っ込めることで口元が引っ込み、顔の印象が変わることがあります。非抜歯矯正では、そのような大きな変化が生じにくく、より自然な表情を維持できる可能性が高いです。

さらに、顎関節への負担が少ないことも挙げられます。抜歯によって噛み合わせが大きく変化すると、顎関節に負担がかかり、顎関節症のリスクが高まることがあります。非抜歯矯正では、そのようなリスクを軽減できる可能性があります。

非抜歯矯正の主なデメリット

一方で、非抜歯矯正にはデメリットもあります。最も大きな懸念は、歯列が前に出てしまう可能性です。スペースを確保するために歯列を拡大すると、前歯が前方に傾斜し、「出っ歯」の印象になることがあります。

また、歯を削って隙間を作る「IPR(歯間削合)・ディスキング」を行う場合、エナメル質が薄くなるため、知覚過敏や虫歯のリスクが若干高まる可能性があります。ただし、適切な技術で行えば、このリスクは最小限に抑えられます。

さらに、非抜歯矯正が適さない症例に無理に適用すると、治療結果が不安定になり、後戻りのリスクが高まることがあります。特に重度の叢生や骨格的な問題がある場合は注意が必要です。

これらのメリットとデメリットを踏まえた上で、あなたの症例に最適な治療法を選ぶことが大切です。当院では、患者さま一人ひとりの状態を詳細に診断し、最適な治療計画をご提案しています。

非抜歯矯正で使われる主な装置と技術

非抜歯矯正を実現するためには、さまざまな装置や技術が用いられます。ここでは、当院で採用している主な方法をご紹介します。

MEAW(Multiloop Edgewise Arch Wire)

当院では、矯正システム「MEAW(Multiloop Edgewise Arch Wire)」を採用しています。これは、特殊なワイヤーを使用して歯を効率的に動かす技術です。従来の矯正方法では抜歯が必要だった症例でも、このテクニックを用いることで非抜歯での治療が可能になるケースが増えています。

「MEAW(Multiloop Edgewise Arch Wire)」は、歯を単に並べるだけでなく、噛み合わせの機能も重視した治療法です。顎の成長を促したり、奥歯の位置を調整したりすることで、前歯に必要なスペースを確保します。

また、ゴムメタルワイヤーを使用し、歯を適切な位置へ3次元的に移動ができます。ブラケットの位置やワイヤーの種類を治療が進む段階ごとにかえて移動させてゆくので治療期間が短くなります。

マウスピース矯正

透明なマウスピース型の矯正装置も、非抜歯矯正に適しています。取り外し可能で目立ちにくいため、見た目を気にする方に人気です。当院では、インビザライン・クリアコレクトと2種類のマウスピース矯正も提供しています。

マウスピース矯正は、コンピューターシミュレーションによって治療計画を立て、段階的に歯を移動させていきます。歯の動きを細かくコントロールできるため、非抜歯での治療が可能なケースが多いです。

拡大装置

小児や若年者の場合、顎の骨の成長を利用して非抜歯矯正を行うことができます。拡大装置を用いて上顎を広げ、歯が並ぶスペースを確保する方法です。

この方法は、成長期の患者さまに特に効果的です。早期に介入することで、将来的な抜歯矯正を回避できる可能性が高まります。

IPR(歯間削合)・ディスキング

IPRとは、歯と歯の接触面を少量削って隙間を作る技術です。日本人はエナメル質が比較的厚いため、適切な量を削ることで健康に悪影響を与えずにスペースを確保できます。

IPRは、1本あたり0.2〜0.5mm程度の削合を行いますが、これは虫歯治療で削る量よりもはるかに少ないです。複数の歯に対して行うことで、必要なスペースを確保します。

これらの技術を組み合わせることで、多くの症例で非抜歯矯正が可能になっています。当院では、患者さまの状態に合わせて最適な方法を選択し、効果的な治療を提供しています。

非抜歯矯正の実際の症例と治療期間

ここでは、当院で実際に行った非抜歯矯正の症例をいくつかご紹介します。

20代女性の叢生症例

20代の女性患者さまで、上下の歯列に叢生があるケースです。特に上顎の犬歯が高い位置に生えており、いわゆる「八重歯」の状態でした。多くの歯科医院では抜歯矯正を勧められていたそうですが、当院ではゴムメタルワイヤーを使用した非抜歯矯正を行いました。

治療期間は約11ヶ月、通院回数は11回でした。治療費は約80万円(税込)でした。

30代女性の全顎矯正症例

30代の女性患者さまで、非抜歯での全顎矯正を行ったケースです。治療期間は約2年4ヶ月、通院回数は30回でした。総治療費は83万円(税込)でした。

出っ歯の症例

上顎前突(出っ歯)の女性患者さまの症例です。治療期間は約1年9ヶ月、通院回数は23回でした。総治療費は80万円(税込)でした。

画像など詳細な症例に関してはこちらをご覧ください。

大人の患者さまの矯正症例ページ

これらの症例からわかるように、非抜歯矯正の治療期間は症例によって異なりますが、おおよそ1年から2年程度です。通院頻度は月1回程度が一般的で、治療費は80万円から90万円程度となっています。

当院では、治療開始前に詳細な治療計画と費用の説明を行い、患者さまが安心して治療を受けられるよう心がけています。

非抜歯矯正を成功させるためのポイント

非抜歯矯正を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。

まず最も重要なのは、適切な症例選択です。すべての症例が非抜歯矯正に適しているわけではありません。経験豊富なドクターによる正確な診断が不可欠です。当院では、歯科用CTや詳細な分析を行い、非抜歯矯正が適切かどうかを慎重に判断しています。

次に、患者さま自身の協力も重要です。特にマウスピース矯正では、1日20時間以上の装着が推奨されています。また、定期的な通院や、歯科医師の指示に従った口腔ケアも治療成功の鍵となります。

さらに、治療後の保定期間も非常に重要です。矯正治療が終わった後も、一定期間は保定装置を使用して治療結果を安定させる必要があります。保定をしっかり行わないと、せっかく整えた歯並びが元に戻ってしまう「後戻り」のリスクが高まります。

当院では、治療終了後も定期的な経過観察を行い、必要に応じて保定装置の調整を行っています。これにより、長期的に安定した治療結果を維持することができます。

最後に、矯正治療中の口腔衛生管理も重要です。矯正装置があると歯磨きが難しくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。当院では、矯正治療中の効果的な歯磨き方法や、補助的な清掃用具の使用方法についても丁寧に指導しています。

これらのポイントに注意することで、非抜歯矯正の成功率を高め、美しい歯並びを長期間維持することができます。

まとめ:非抜歯矯正で理想の歯並びを手に入れよう

今回は、非抜歯矯正の費用相場から適応症例、メリット・デメリット、そして実際の症例まで詳しく解説してきました。

非抜歯矯正は、健康な歯を残しながら美しい歯並びを実現できる素晴らしい選択肢です。費用相場は100万円程で、治療期間は1年から2年程度が一般的です。軽度から中等度の叢生や、小さな空隙、軽度の出っ歯などが適応症例となります。

非抜歯矯正の最大のメリットは、健康な歯を残せることと、治療期間が比較的短いことです。一方で、すべての症例に適しているわけではなく、重度の叢生や骨格的な問題がある場合は、抜歯矯正が必要になることもあります。

当院では、「MEAW(Multiloop Edgewise Arch Wire)」やマウスピース矯正・床矯正装置を採用し、できる限り歯を抜かない矯正治療を提供しています。また、歯科用CTを活用した精密な診断により、患者さま一人ひとりに最適な治療計画を立てています。

非抜歯矯正を成功させるためには、定期的な治療の他、患者さまご自身のご協力、治療後の保定、そして口腔衛生管理が重要です。これらのポイントに注意することで、美しい歯並びを長期間維持することができます。

歯並びの悩みは、見た目だけでなく、咀嚼機能や発音、さらには全身の健康にも影響を与えます。少しでも気になることがあれば、まずは臨床経験豊富な歯科医師に相談してみることをおすすめします。

お気軽にご相談ください。あなたに最適な矯正治療プランをご提案いたします。

美しい歯並びで、より自信に満ちた笑顔を手に入れましょう。

医療法人社団 緑幸会 理事長 鈴木聡

監修者情報

鈴木 聡(すずき さとし)先生
医療法人社団 緑幸会 桜新町グリーン歯科矯正歯科 理事長

略歴
広島大学歯学部卒業後、複数の歯科医院で研鑽を積み、幅広い症例に対応。現在は、登戸・東京都世田谷区桜新町に分院を展開しており、ゴムメタルワイヤーや取り外し式の矯正装置などを活用した「できるだけ歯を抜かない非抜歯矯正」治療や「歯を守るインプラント治療」を統括する医療法人社団 緑幸会の理事長として、地域の歯科医療に貢献している。

専門分野
矯正歯科・インプラント治療・審美歯科
特に、抜歯に頼らない「非抜歯矯正」や、目立ちにくい「マウスピース矯正(インビザライン)」に注力し、見た目と機能の両立を図る治療に力を入れている。

所属学会等

  • 日本矯正歯科学会 会員

  • 日本口腔インプラント学会 会員

監修者からのひとこと
患者さまの「見た目」と「噛める機能」の両立を大切にし、年齢やライフスタイルに合わせた矯正治療を心がけています。大人の方でも安心して始められる治療法をご提案いたします。

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