「フロスをしますか、それとも死を選びますか」

歯周病 フロス 心筋梗塞

ずいぶん昔の話になりますが、1998年のアメリカ歯周病学会で

Floss or die: implications for dental professionals

という論文が発表されました。

「Floss or die(デンタルフロスか死か)」というと、なんとも物騒な響きですが、当時流行っていたフレーズのようにいうと、「フロスをしますか、それとも死を選びますか」という調子でしょうか。
口腔清掃が不十分だと心筋梗塞など致死的な疾患に罹りやすいことを、インパクトのあるキャッチコピーにしたようです。

虚血性心疾患

虚血性心疾患は加齢・喫煙・家族歴・肥満・糖尿病・高血圧・高脂血症などがリスク因子になると言われています。
その中でも加齢と家族歴(家族・親戚が若い時に心筋梗塞を起こしている)は、本人の努力で変えられるものではありません。
肥満や高脂血症、高血圧、喫煙、2型糖尿病は生活習慣に気をつけることで、ある程度コントロールできると考えられています。

そこで歯周病はどうか

さて、そこで歯周病はどうかと言いますと、当時、60歳未満で歯周病による骨の吸収が重度の人はそうではない人の2.48倍、心血管疾患を発症しやすかったという疫学研究も出ているようです。
これらのことから、冒頭のFloss or dieのように、心疾患を防ぐためにフロスをしましょう、という話になっていったようです。
しかし、興味深いことに、2012年に米国心臓協会(AHA)は1950年から2011年までの論文を比較検討した結果、多くのリスク因子が歯周病と虚血性心疾患で共通していることが交絡因子になっているものの、歯周病が虚血性心疾患の発症や進行に影響を及ぼす十分なエビデンスがないという報告を出したようです。
しかし、歯周病が短期的な全身性の炎症状態と血管内皮細胞の機能に影響を及ぼすことにはコンセンサスが得られているため、心疾患と歯周病の関わりが完全に否定されたわけではありません。
このAHAの発表には、アメリカ歯科会の過度なアピールにより、元もと周知されていた高血圧や肥満などのリスク因子を軽視することのないように啓発するものであったという見方もあるようです。

心疾患 歯周病と心臓の関連 論文

また、2023年に東京科学大学(東京医科歯科大学)の前嶋准教授らの論文

Porphyromonas gingivalis, a periodontal pathogen, impairs post-infarcted myocardium by inhibiting autophagosome–lysosome fusion

によると、歯周病菌の一種のPorphyromonas Gingivalisがもつジンジパインというタンパク質が心筋細胞のオートファジーを阻害することで心筋梗塞後の心臓組織の回復を遅らせる可能性があることを突き止めたそうです。
AHAとアメリカ歯周病学会の発表など、これからも色々な情報は出てきそうですが、歯周病菌でない方が体へのメリットが大きいという柱に変化はなさそうです

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