歯周病治療の期間と回復過程〜症状別の治療スケジュール
歯周病は日本人の成人の多くが抱える口腔内の疾患です。「歯周病と診断されたけれど、どのくらいの期間治療が必要なの?」「症状によって治療期間は変わるの?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
歯周病は進行度合いによって治療法や期間が大きく異なります。早期発見・早期治療が何よりも重要であり、症状が進行するほど治療期間は長くなり、元の健康な状態への回復も難しくなってしまいます。
私は30年以上にわたり歯科医療に携わってきましたが、多くの患者さまが歯周病の治療期間について不安を抱えていることを実感しています。
歯周病は完全に治るのか?治療の基本的な考え方
まず最初に理解しておきたいのは、歯周病は本当に「治る」のかという点です。
歯周病は歯肉炎から始まり、進行すると歯周炎へと移行します。歯肉炎の段階では、適切な治療とセルフケアにより炎症を取り除くことで、歯茎は元の健康な状態に戻ることが可能です。しかし、歯周炎に進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)が破壊され始めます。
残念ながら、一度破壊された歯槽骨は自然に元の状態には戻りません。つまり、歯周炎の段階まで進行した歯周病は、厳密には「完全に治る」とは言えないのです。
ただし、適切な治療とセルフケアにより、炎症をなくして歯周病の進行を止めることは可能です。歯科医院での定期的なメンテナンスと適切なセルフケアを継続することで、炎症のない健康な口腔内を維持していくことができるのです。
歯周病治療の目標は、「歯周病になる前の状態に完全に戻す」ではなく、「炎症をなくし、歯周病の進行を止め、健康な状態を維持する」ことにあります。
どうして歯周病は完全に治らないと言われるのでしょうか?
歯周炎となり一度破壊されてしまった歯槽骨などの歯周組織は、炎症がなくなっても自然に元に戻ることはありません。そのため「治る」の捉え方の違いにより、歯科医院によっては歯周病は一度なったら治らないと言われることがあるのです。
歯周病の進行段階と症状別の治療期間
歯周病の治療期間は、その進行度合いによって大きく異なります。ここでは、進行段階別に治療期間の目安をご紹介します。
歯肉炎(初期段階)の治療期間
歯肉炎は歯周病の初期段階で、歯茎に軽い炎症が起きている状態です。この段階では、歯茎が赤く腫れ、歯磨き時に出血することがあります。
歯肉炎の治療期間は比較的短く、通常1〜2ヶ月程度です。歯科医院でのプロフェッショナルケア(歯石除去など)と適切なセルフケア(正しい歯磨き)により、炎症を取り除くことができます。
歯肉炎の段階で適切な治療を受ければ、歯茎は元の健康な状態に戻ることが可能です。ですから、歯茎の出血に気づいたら、早めに歯科医院を受診することをお勧めします。
軽度歯周炎の治療期間
軽度歯周炎になると、炎症が歯茎の奥に進行し、歯を支える骨(歯槽骨)が少し溶け始めます。歯周ポケットの深さは3〜4mm程度になります。
軽度歯周炎の治療期間は、通常3〜6ヶ月程度です。歯科医院でのスケーリング・ルートプレーニング(歯石除去と歯根面の清掃)と、自宅でのセルフケアの徹底が必要です。
この段階でも、適切な治療により炎症を取り除き、歯周病の進行を止めることができます。ただし、すでに溶けてしまった骨は自然には戻りません。
中等度歯周炎の治療期間
中等度歯周炎では、歯槽骨の破壊がさらに進み、歯周ポケットの深さは5〜7mm程度になります。歯がグラグラし始め、硬いものが食べにくくなることもあります。
中等度歯周炎の治療期間は、通常6〜12ヶ月程度かかります。スケーリング・ルートプレーニングに加えて、歯周ポケットが深い場合は歯周外科治療が必要になることもあります。
歯周外科治療とは、歯茎を切開して歯の根の表面に付着した歯石や細菌を直接見ながら除去する治療法です。これにより、歯周ポケット内の細菌や歯石を確実に取り除くことができます。
重度歯周炎の治療期間
重度歯周炎になると、歯槽骨の大部分が失われ、歯周ポケットの深さは7mm以上になります。歯が大きくグラつき、噛む機能が著しく低下します。
重度歯周炎の治療期間は、通常1〜2年以上かかることもあります。スケーリング・ルートプレーニングや歯周外科治療に加えて、失われた骨を再生させる治療(骨再生療法)が必要になることもあります。
重度歯周炎の場合、残念ながら保存が難しい歯は抜歯せざるを得ないこともあります。抜歯後は、インプラントや入れ歯などで噛む機能を回復する治療が必要になります。

歯周病治療の流れと各ステップにかかる期間
歯周病の治療は、一般的に次のような流れで進められます。ここでは、各ステップにかかる期間の目安もご紹介します。
1. 歯周病検査(初診時:1回)
まず、歯周病の状態を正確に把握するために、詳細な検査を行います。検査内容には、口腔内の清掃状態の確認、歯周ポケットの深さの測定、歯の動揺度検査、レントゲン撮影などが含まれます。
当院では高性能のデンタルCT撮影装置を導入しており、より精密な診断が可能です。これにより、歯槽骨の状態を立体的に把握し、最適な治療計画を立てることができます。
2. 治療方針の説明(初診時または2回目:1回)
検査結果をもとに、患者さまの口腔内の状態や全身の健康状態、治療への希望などを考慮して、最適な治療方針を説明します。治療期間や費用についても、この段階でご説明します。
3. 歯周基本治療(2〜6ヶ月)
歯周基本治療は、歯周病と診断されたすべての方に行われる治療です。主な内容は以下の通りです。
【スケーリング】歯茎の上の歯石(歯肉縁上歯石)を除去します。歯石はプラークと唾液中のカルシウムが固まったもので、表面がざらざらしているため、汚れが付着しやすくなります。
【SRP(スケーリング・ルートプレーニング)】歯茎より下の歯石(歯肉縁下歯石)を除去し、歯根面をなめらかにして歯周病菌が付着するのを防ぎます。1回の治療で行える範囲は4〜6本程度で、ブロックごとに分け、最大6回程度かけて全体をきれいにしていきます。
【ブラッシング指導】正しい歯磨き方法を指導します。毎日の適切なセルフケアは、歯周病治療の成功に不可欠です。
歯周基本治療の期間は、歯周病の進行度や口腔内の状態によって異なりますが、通常2〜6ヶ月程度かかります。
4. 再評価(基本治療後:1回)
歯周基本治療の効果を確認するために、再度歯周ポケットの深さや炎症の状態を検査します。この結果に基づいて、追加の治療が必要かどうかを判断します。
軽度の歯周病であれば、この段階で炎症が改善していることが多く、その後はメンテナンスに移行します。中等度以上の歯周病では、さらに歯周外科治療などが必要になることがあります。
5. 歯周外科治療(必要に応じて:1〜3ヶ月)
歯周基本治療だけでは改善しない深い歯周ポケットがある場合、歯周外科治療を行います。歯茎を切開して歯の根の表面を直接見ながら歯石や細菌を除去します。
また、失われた骨を再生させる治療(エムドゲイン法やGTR法など)を併用することもあります。歯周外科治療は部位ごとに行い、全体の治療期間は1〜3ヶ月程度かかることが多いです。
6. 再評価(外科治療後:1回)
歯周外科治療後、治癒を待って再度評価を行います。炎症が改善し、歯周ポケットが浅くなっていれば、次のステップに進みます。
7. 口腔機能回復治療(必要に応じて:1〜6ヶ月)
歯周病によって失われた歯がある場合や、噛み合わせに問題がある場合は、インプラント、入れ歯、被せ物などで口腔機能を回復させる治療を行います。
当院では「なるべく歯を抜かない」方針で治療を行っていますが、保存が難しい歯については、長期的な口腔健康を考慮して、適切な機能回復治療をご提案します。
8. メンテナンス(生涯継続:3〜6ヶ月ごと)
歯周病治療の最終目標は、健康な口腔環境を維持することです。そのためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。
メンテナンスでは、プロフェッショナルクリーニング、歯周ポケットの検査、必要に応じた歯石除去などを行います。メンテナンスの間隔は、歯周病のリスクに応じて1〜3ヶ月ごとに設定されます。
歯周病は一度改善しても、セルフケアとプロフェッショナルケアを怠ると再発するリスクがあります。生涯にわたるメンテナンスが、健康な口腔環境を維持するために重要です。
歯周病の回復過程と治癒のサイン
歯周病治療を受けると、どのような変化が現れるのでしょうか。ここでは、歯周病の回復過程と治癒のサインについてご説明します。
歯肉炎からの回復過程
歯肉炎の治療を始めてから1〜2週間程度で、歯茎の赤みや腫れが徐々に改善し始めます。適切なブラッシングを続けることで、歯磨き時の出血も減少していきます。
1〜2ヶ月程度で、歯茎は健康的なピンク色に戻り、引き締まった状態になります。歯磨き時の出血もなくなり、口臭も改善します。
歯肉炎の段階では、適切な治療とセルフケアにより、歯茎は完全に健康な状態に戻ることが可能です。
歯周炎からの回復過程
歯周炎の場合、回復にはより長い時間がかかります。スケーリング・ルートプレーニング後、2〜4週間程度で炎症が徐々に軽減し始めます。
3〜6ヶ月かけて、歯周ポケットが徐々に浅くなり、歯茎の状態が改善していきます。ただし、すでに失われた歯槽骨は自然には再生しません。
歯周外科治療を受けた場合は、手術後1〜2週間で傷が癒合し、1〜3ヶ月かけて歯茎の形態が安定します。骨再生療法を併用した場合は、骨の再生に6ヶ月〜1年程度かかることもあります。
治癒のサイン
歯周病治療が成功しているかどうかを判断するサインには、以下のようなものがあります。
【歯茎の色と形態】健康な歯茎はピンク色で引き締まっており、歯と歯の間の歯茎はきれいな三角形をしています。治療が進むにつれて、赤く腫れた歯茎が健康的なピンク色に変化していきます。
【出血の減少】歯磨き時や歯科医院での検査時の出血が減少または消失します。
【口臭の改善】歯周病菌による口臭が改善します。
【歯のグラつきの減少】中等度以上の歯周炎では、歯がグラついていることがありますが、治療により炎症が改善すると、グラつきが軽減することがあります。
【歯周ポケットの浅化】治療前に深かった歯周ポケットが浅くなります。健康な状態では、歯周ポケットの深さは3mm以下です。
これらのサインが現れてきたら、治療が順調に進んでいる証拠です。ただし、治療の成功を維持するためには、適切なセルフケアと定期的なメンテナンスが不可欠です。

治療期間を短縮するためのポイント
歯周病の治療期間は、患者さま自身の取り組み方によって大きく左右されます。ここでは、治療期間を短縮するためのポイントをご紹介します。
1. 徹底したセルフケア
歯周病治療の成功には、患者さま自身による日々のセルフケアが不可欠です。歯科医院での治療だけでは、歯周病を完全に改善することはできません。
正しい歯磨き方法を身につけ、毎日欠かさず実践することが重要です。歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを使用して、歯と歯の間の清掃も徹底しましょう。
当院では、患者さま一人ひとりの口腔状態に合わせた最適なブラッシング方法を指導しています。指導された方法を忠実に実践することで、治療効果が高まり、治療期間の短縮につながります。
2. 定期的な通院
歯周病治療は、計画的な通院が必要です。予約をキャンセルしたり、通院間隔が空きすぎたりすると、治療効果が低下し、結果的に治療期間が長引いてしまいます。
歯科医師・歯科衛生士の指示に従って、定期的に通院することが、治療期間を短縮するためのカギとなります。当院では、患者さまのライフスタイルに合わせて、通院スケジュールを柔軟に調整しています。
3. 生活習慣の改善
喫煙は歯周病の大きなリスク因子です。喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病の進行が速く、治療効果も低下します。禁煙することで、歯周病治療の効果が高まり、治療期間の短縮につながります。
また、バランスの良い食事、十分な睡眠、ストレス管理なども、免疫機能を高め、歯周病の治癒を促進します。全身の健康と口腔の健康は密接に関連しているため、生活習慣全体の改善が重要です。
4. 早期発見・早期治療
歯周病は早期発見・早期治療が何よりも重要です。症状が軽いうちに治療を始めれば、治療期間は短く、費用も少なくて済みます。
歯茎の腫れや出血、口臭などの症状に気づいたら、すぐに歯科医院を受診しましょう。また、症状がなくても、定期的な検診を受けることで、初期段階で歯周病を発見することができます。
当院では、初期段階の歯周病も正確に診断し、適切な治療を提供しています。
5. 全身疾患のコントロール
糖尿病などの全身疾患は、歯周病の進行を促進し、治療効果を低下させることがあります。全身疾患をお持ちの方は、内科医と連携して疾患のコントロールを行うことが、歯周病治療の成功につながります。
最近の研究では、歯周病治療が糖尿病の改善にも効果があることが報告されています。歯周病と全身疾患は相互に影響し合うため、両方の治療を並行して行うことが重要です。
当院では、必要に応じて内科医との連携を図り、全身的な健康も考慮した歯周病治療を提供しています。
症例別:歯周病治療の実際と回復までの道のり
ここでは、当院で実際に治療を行った歯周病患者さまの症例をご紹介します。症状の程度によって、治療内容や期間、回復の過程がどのように異なるかをご理解いただけると思います。
軽度歯周炎の症例
40代女性の患者さまは、歯磨き時の出血と口臭を主訴に来院されました。検査の結果、全体的に軽度の歯周炎と診断しました。歯周ポケットの深さは3〜4mm程度でした。
まず、歯周基本治療として、スケーリングと歯面清掃、ブラッシング指導を行いました。患者さまは熱心にセルフケアに取り組み、2ヶ月後には歯茎の炎症が大幅に改善しました。
その後、3ヶ月間隔でのメンテナンスに移行し、現在は健康な口腔環境を維持しています。この症例では、初診から炎症の改善まで約2ヶ月、その後のメンテナンスへの移行まで含めると、全体の治療期間は約3ヶ月でした。
中等度歯周炎の症例
50代男性の患者さまは、歯のグラつきと冷たいものがしみることを主訴に来院されました。検査の結果、中等度の歯周炎と診断しました。歯周ポケットの深さは5〜6mm程度で、一部の歯に動揺が見られました。
まず、歯周基本治療として、スケーリング・ルートプレーニングを4回に分けて行いました。同時に、喫煙習慣のある患者さまだったため、禁煙指導も行いました。
基本治療後の再評価で、一部に深い歯周ポケットが残っていたため、局所的に歯周外科治療(フラップ手術)を行いました。手術後、歯周ポケットは大幅に改善し、歯の動揺も軽減しました。
初診から炎症の改善まで約6ヶ月、その後3ヶ月間隔でのメンテナンスに移行しました。全体の治療期間は約8ヶ月でした。
重度歯周炎の症例
60代男性の患者さまは、複数の歯がグラグラして噛めないことを主訴に来院されました。他院では「ほとんどの歯を抜歯して総入れ歯にする」と言われていたそうです。
検査の結果、重度の歯周炎と診断しました。歯周ポケットの深さは7〜10mm程度で、多くの歯に著しい動揺が見られました。レントゲン検査では、歯槽骨の大幅な吸収が確認されました。
まず、歯周基本治療として、スケーリング・ルートプレーニングを6回に分けて行いました。同時に、咬合調整や暫間固定(グラグラした歯を隣の歯と接着剤で固定する処置)も行いました。
基本治療後、深い歯周ポケットに対して歯周外科治療を行い、一部の部位では骨再生療法(エムドゲイン法)も併用しました。保存が難しいと判断した2本の歯は抜歯し、後日インプラント治療を行いました。
初診から炎症の改善まで約1年、その後のインプラント治療を含めると、全体の治療期間は約1年半でした。現在は3ヶ月間隔でのメンテナンスを継続しています。
この症例では、重度の歯周炎にもかかわらず、適切な治療により多くの歯を保存することができました。患者さまも「総入れ歯になると思っていたので、自分の歯で噛めることがとても嬉しい」と喜んでおられます。
まとめ:歯周病治療の成功のカギ
歯周病治療の期間と回復過程について、症状別に詳しく解説してきました。最後に、歯周病治療を成功させるためのポイントをまとめます。
歯周病治療の期間は、症状の程度によって大きく異なります。歯肉炎の段階なら1〜2ヶ月、軽度歯周炎なら3〜6ヶ月、中等度歯周炎なら6〜12ヶ月、重度歯周炎なら1年以上かかることもあります。
歯周病治療の成功のカギは、次の3点に集約されます。
【早期発見・早期治療】歯周病は初期段階ほど治療が容易で、期間も短くて済みます。定期的な検診を受けることで、早期発見・早期治療が可能になります。
【プロフェッショナルケアとセルフケアの両立】歯科医院での専門的な治療(プロフェッショナルケア)と、自宅での適切なセルフケアの両方が不可欠です。特に、患者さま自身による日々のセルフケアは、治療の成否を左右する重要な要素です。
【継続的なメンテナンス】歯周病治療が一段落しても、定期的なメンテナンスを継続することが、健康な口腔環境を維持するために重要です。メンテナンスを怠ると、歯周病が再発するリスクがあります。
当院では、患者さま一人ひとりの口腔状態に合わせた最適な治療計画を立て、丁寧な説明と指導を心がけています。歯周病でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
「2度と歯で困らない歯科治療」「質、量ともに登戸で1番の予防歯科サービス」を目指す当院が、あなたの大切な歯を守るお手伝いをいたします。
医療法人社団緑幸会 理事長 鈴木聡
監修者情報
鈴木 聡(すずき さとし)先生
医療法人社団 緑幸会 桜新町グリーン歯科矯正歯科 理事長

略歴
広島大学歯学部卒業後、複数の歯科医院で研鑽を積み、
専門分野
矯正歯科・インプラント治療・審美歯科
特に、抜歯に頼らない「非抜歯矯正」や、目立ちにくい「マウスピース矯正(インビザライン)」に注力し、見た目と機能の両立を図る治療に力を入れている。
所属学会等
-
日本矯正歯科学会 会員
-
日本口腔インプラント学会 会員
監修者からのひとこと
患者さまの「見た目」と「噛める機能」の両立を大切にし、年齢やライフスタイルに合わせた矯正治療を心がけています。大人の方でも安心して始められる治療法をご提案いたします。







