虫歯で神経治療が必要になる前に知っておくべきこと
虫歯の進行と神経治療が必要になるタイミング
虫歯は静かに進行します。初期段階では痛みもなく、気づかないうちに歯の内部へと侵食していくのです。
虫歯が神経(歯髄)に近づくと、急に痛みを感じるようになります。冷たい飲み物がしみたり、甘いものを食べると痛みが走ったりする症状が現れます。このような症状が出始めたら、すでに虫歯は相当進行しているサインなのです。
虫歯は進行度合いによって5段階に分けられます。C0(初期う蝕)、C1(エナメル質う蝕)、C2(象牙質う蝕)、C3(神経まで達したう蝕)、C4(残根状態)です。C3まで進行すると、神経治療(根管治療)が必要になるケースが多いのです。
では、なぜ神経治療は避けたほうが良いのでしょうか?それは、神経を失った歯は生きた歯ではなくなり、栄養供給が途絶えて徐々に脆くなっていくからです。神経を残せれば、歯の寿命は格段に延びるのです。

神経治療(根管治療)とは何か?その流れと知っておくべきこと
神経治療は、歯の内部にある「歯髄」と呼ばれる組織を除去する治療です。虫歯菌が歯髄まで到達し、感染してしまった場合に必要となります。
根管治療は数回に分けて行われる複雑な処置です。まず局所麻酔を行い、虫歯を削って歯髄腔にアクセスします。次に感染した歯髄を特殊な器具で取り除き、根管内を洗浄・消毒します。その後、根管内に薬剤を充填して密閉し、最後に被せ物で歯を保護します。
神経を取った歯は、元の歯と比較して割れやすくなります。特に奥歯は力がかかるため、被せ物をせずに放置したり、小さな詰め物だけで済ませたりすると、歯が割れるリスクが高まります。
また、根管治療の期間は歯の種類によって異なります。前歯は根が1本のため比較的短期間で終わりますが、奥歯は根が複数あるため、治療完了までに時間がかかります。
根管治療は痛みを取り除くためには効果的ですが、できれば避けたい治療です。神経のない歯は長期的に見ると弱くなり、寿命が短くなる傾向があるからです。
では、どうすれば神経治療を避けられるのでしょうか?
神経治療を避けるための最新アプローチ「歯髄温存療法」
歯科医療の進歩により、以前なら確実に神経を取っていたケースでも、神経を残せる可能性が高まっています。その代表的な治療法が「歯髄温存療法」です。
歯髄温存療法(Vital Pulp Therapy: VPT)とは、虫歯や外傷による歯髄の炎症が軽度である場合に、歯髄(神経)を可能な限り残し、歯の寿命を延ばす治療法です。
特にMTA(Mineral Trioxide Aggregate)という材料の登場により、歯髄温存の成功率は飛躍的に向上しました。従来のカルシウム水酸化物製剤と比較して、MTAを用いた歯髄温存療法は80〜95%という高い成功率が報告されています。
歯髄温存療法には主に3つの種類があります。
直接覆髄法は、ごく小さな露髄(神経の露出)があるが、炎症が軽度な場合に適用されます。MTAやカルシウム水酸化物製剤を使用して露髄部分を保護します。
間接覆髄法は、象牙質の深部まで虫歯が進行しているが、歯髄は露出していない場合に適用されます。虫歯を除去し、歯髄を刺激しないような薬剤で覆います。
断髄法は、歯髄の一部に炎症があるが、根尖部の歯髄は健康な場合に適用されます。炎症がある歯髄の一部を除去し、残った健康な歯髄を保護します。
(歯髄温存療法は、いずれの治療でも自由診療となります。)
神経治療が必要になる前に実践すべき予防策
虫歯予防は、神経治療を避けるための最も確実な方法です。日々の習慣が、あなたの歯の未来を大きく左右します。
虫歯予防の基本は、やはり正しい歯磨きです。特に就寝前の歯磨きは重要で、寝ている間は唾液の分泌が減るため、虫歯菌が活発に活動しやすくなります。
しかし、最も重要なのは食生活です。甘い飲み物を少しずつ長時間にわたって飲むことや、寝る前に甘いものを食べることは、虫歯リスクを大幅に高めます。
どんなに気をつけていても、生まれつきの唾液や歯の性質で虫歯になりやすい方もいらっしゃいます。そのため、定期検診が非常に重要です。
「痛くなってから歯医者に行く」という方は、神経治療が必要になる可能性が高くなります。小さな虫歯のうちに発見して治療することで、神経治療を回避できる可能性が高まります。
あなたは定期検診に行っていますか?
近年、定期検診に通う方は増加傾向にあります。3ヶ月に一度の検診と専門的なクリーニングを受けることで、虫歯リスクを大幅に減らすことができるのです。

神経を残すことのメリットと長期的な歯の健康
神経を残すことには、計り知れないメリットがあります。歯の神経(歯髄)は、単なる「痛みを感じる組織」ではありません。歯に栄養や水分を供給し、外部からの刺激を感知する重要な役割を担っているのです。
神経のある歯は「生きた歯」です。神経を通じて常に栄養が供給されるため、歯の強度が維持されます。一方、神経を失った歯は徐々に乾燥して脆くなり、割れやすくなります。
また、神経のある歯は外部からの刺激(熱い・冷たい・痛い)を感じることができるため、問題が生じた際に早期に気づくことができます。神経のない歯は痛みを感じないため、虫歯や亀裂が進行しても気づきにくく、気づいた時には手遅れということもあります。
さらに、神経を残すことで将来的な治療の選択肢も広がります。神経治療を行った歯は、その後の治療オプションが限られることがあります。
神経温存治療は、歯の寿命を延ばすだけでなく、将来的な歯科治療の負担も軽減します。神経を残すことで、あなたの口腔内の健康を長期的に維持することができるのです。
あなたの歯の健康は、一生の財産です。
神経治療が必要になった場合の最適な対応
もし虫歯が進行して神経治療が必要になった場合でも、適切な対応で歯の寿命を最大限に延ばすことができます。
まず、神経治療(根管治療)を受ける際は、できるだけ専門性の高い歯科医師を選ぶことが重要です。根管治療は非常に繊細で技術を要する治療であり、治療の質によって予後が大きく変わります。
神経治療後は、適切な被せ物(クラウン)で歯を保護することが非常に重要です。特に奥歯は強い咬合力がかかるため、神経治療後に適切な被せ物をしないと、歯が割れるリスクが大幅に高まります。
また、神経治療後も定期的なメンテナンスが欠かせません。神経のない歯は痛みを感じないため、問題が生じても自覚症状が出にくいのです。定期検診で早期に問題を発見することが、治療歯の寿命を延ばす鍵となります。
神経治療を受けた歯は特別なケアが必要です。通常の歯磨きに加え、歯間ブラシやフロスを使用して被せ物の周囲を丁寧に清掃することが大切です。
神経治療後の歯は生体としての機能は失われていますが、適切なケアによって長期間機能させることが可能です。治療後のケアを怠らないことが、歯の寿命を延ばす秘訣なのです。
まとめ:健康な歯を長く保つための総合戦略
虫歯で神経治療が必要になる前に知っておくべきことをお伝えしてきました。最後に、健康な歯を長く保つための総合戦略をまとめます。
まず、予防が最も重要です。正しい歯磨き習慣、食生活の改善、そして定期的な歯科検診によって、虫歯のリスクを大幅に減らすことができます。
もし虫歯になってしまっても、早期発見・早期治療が鍵となります。小さな虫歯のうちに治療すれば、神経治療を避けられる可能性が高まります。
虫歯が進行して神経に近づいた場合でも、MTAなどの最新材料を用いた歯髄温存療法によって、神経を残せる可能性があります。適切な歯科医師に相談することが重要です。
万が一、神経治療が必要になった場合は、質の高い治療と適切な被せ物、そして継続的なメンテナンスによって、治療後の歯の寿命を最大限に延ばすことができます。
そして、歯髄再生治療などの最新技術も視野に入れておくことで、将来的な選択肢を広げることができるでしょう。
あなたの歯は一生の財産です。適切なケアと最新の治療法を知ることで、健康な歯を長く保ち、豊かな人生を送りましょう。
歯の健康に関する詳しい情報や、最新の非抜歯矯正治療については、桜新町グリーン歯科・矯正歯科までお気軽にご相談ください。私たちは「満足していただける歯科医療サービス」をコンセプトに、皆様の歯の健康をサポートいたします。
歯科医師 木村采香







