歯ぎしりの本当の原因と効果的な7つの対策
歯ぎしりとは?睡眠中に起こる無意識の習慣
夜中に「カチカチ」「ギリギリ」という音で家族に起こされたことはありませんか?
歯ぎしりは、睡眠中に上下の歯を無意識に擦り合わせたり、強く噛みしめたりする現象です。専門用語では「ブラキシズム」とも呼ばれ、単なる癖と思われがちですが、実はさまざまな健康問題を引き起こす可能性がある症状なのです。
私は歯科医療に携わる中で、歯ぎしりに悩む患者さんは非常に多いと感じています。特に現代社会では、ストレスの増加とともに歯ぎしりの症状を訴える方が増えているようです。
歯ぎしりには大きく分けて3つのタイプがあります。
1.上下の歯をカチカチと鳴らす「タッピング」
2.歯を強く噛みしめる「クレンチング」
3.上下の歯をギリギリと擦り合わせる「グラインディング」
この中でも、タッピングとグラインディングは音を伴うため発見されやすいのですが、クレンチングは音が出ないため、本人も気付かないことが多く、症状の発見が遅れがちです。

歯ぎしりの本当の原因とは?
なぜ歯ぎしりが起こるのか、正確なメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、複数の要因が複雑に絡み合っていることがわかっています。
主な原因として以下の4つが考えられています。
1. 日常生活のストレスと精神的要因
現代社会に生きる私たちの多くが抱える日常的なストレスは、歯ぎしりの最も大きな原因の一つです。仕事や人間関係での緊張、不安、怒り、悔しさなどの感情が、無意識のうちに歯を食いしばる行動につながります。
昼間に感じたストレスが、夜間の睡眠中に歯ぎしりという形で表れるのです。特に浅い眠りの状態(ノンレム睡眠時)に歯ぎしりが発生しやすくなります。
ストレスを感じると体に力が入り、顎の筋肉も緊張します。この緊張が習慣化すると、睡眠中にも無意識に歯を食いしばったり、擦り合わせたりするようになるのです。
2. 噛み合わせの問題と顎の骨格
歯の噛み合わせが悪いと、歯ぎしりが起こりやすくなります。特に一部の歯が他の歯よりも高い位置にあると、その部分が過剰に接触して歯ぎしりの原因となることがあります。
また、顎の骨格に問題がある場合も、歯が不自然に接触しやすくなり、睡眠中に無意識に歯ぎしりをしてしまうことがあります。
ただし、近年の研究では、噛み合わせや骨格の問題だけが単独で歯ぎしりを引き起こすことは少なく、他の要因と組み合わさって症状が現れるという考え方が主流になっています。
3. 口内の不快感
虫歯や歯周病、ドライマウスなどの症状があると、睡眠中に口の中がネバネバして不快感を覚えることがあります。この不快感を解消しようとして口を動かすことが、歯ぎしりにつながる場合があります。
子どもの場合は、乳歯から永久歯への生え変わり時期の違和感やむずがゆさが原因で歯ぎしりをすることもあります。ただ、これは一時的なもので、口内環境の変化に慣れれば自然と解消することが多いです。
4. 生活習慣と関連要因
日常生活での癖や習慣も歯ぎしりと関係しています。例えば、力仕事やスポーツをする際に自然と歯を食いしばる習慣がある人は、それが睡眠時の歯ぎしりにつながることがあります。
また、喫煙や飲酒の習慣も歯ぎしりを悪化させる要因として知られています。アルコールやニコチンは睡眠の質を低下させ、交感神経を亢進させることで、浅い眠りを引き起こし、歯ぎしりが生じやすくなるのです。
さらに、睡眠時無呼吸症候群や逆流性食道炎などの疾患も、歯ぎしりの症状を引き起こすことがあります。

歯ぎしりが引き起こす深刻な健康問題
歯ぎしりなんて、そんなに心配する必要はないと思われがちですが、実は歯ぎしりを放置すると、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。
単なる癖と軽視せず、早めに対策を講じることが大切です。
1. 歯の損傷と痛み
長期間にわたる歯ぎしりによって、歯の表面にあるエナメル質が摩耗していきます。エナメル質が削れると、その下にある象牙質が露出し、知覚過敏や痛みを引き起こします。
また、強い力が歯にかかり続けることで、歯に亀裂が入ったり割れたり欠けたりすることもあります。治療済みの歯の詰め物や被せ物が外れることも珍しくありません。
さらに、インプラントやセラミックの歯もダメージを受ける可能性があります。これらの修復には高額な費用がかかることもあるため、経済的な負担も大きくなります。
2. 顎関節症の発症
歯ぎしりによって顎の関節に長時間強い力がかかり続けると、顎関節症を引き起こすことがあります。顎関節症になると、口を開け閉めする際に痛みを感じたり、カクカク・ポキポキといった音がしたりします。
重症化すると、突然口が開かなくなるロックという症状が現れることもあります。日常生活に大きな支障をきたすため、早期の対応が必要です。

3. 歯周病の進行
歯ぎしりによって歯の根元に過度な負担がかかると、歯根部が歯肉から露出しやすくなります。その結果、歯と歯肉の間に歯周ポケットが形成され、細菌が繁殖しやすい環境が生まれます。
これが歯周病の進行を早める要因となり、最終的には歯を支える骨が吸収され、歯がグラグラになってしまうこともあります。
4. 頭痛・肩こりなどの全身症状
歯ぎしりをすると、顔の筋肉(側頭筋や咬筋)が過剰に使われ、緊張状態が続きます。これが頭の締め付け感や頭痛の原因となります。
さらに、顔の筋肉の緊張は肩の筋肉にも影響を及ぼし、肩こりを引き起こすことがあります。慢性的な痛みによって、日常生活の質が低下することも少なくありません。
5. 睡眠の質の低下
歯ぎしりは睡眠の質を低下させる要因にもなります。強い歯ぎしりによって脳が頻繁に覚醒状態になり、睡眠が分断されてしまうのです。
その結果、「朝起きても疲れが残る」「夜中に何度も目が覚める」といった不眠症状が現れることがあります。睡眠の質が低下すると、日中のパフォーマンスにも悪影響を及ぼします。
意外と知られていない、歯ぎしりの良い効果
歯ぎしりは悪いことばかりなのでしょうか?
実は、歯ぎしりには健康維持に役立つ効果もあることが研究によってわかってきています。歯ぎしりを単に「やめるべきもの」と考えるのではなく、「良い歯ぎしり」と「悪い歯ぎしり」を区別して考えることが大切です。
良い歯ぎしりと悪い歯ぎしり
「良い歯ぎしり」とは、歯ぎしりをした時に奥歯が強く当たらないタイプのものです。これは健康維持に役立つことがわかっています。
一方、「悪い歯ぎしり」は、ギシギシ・ガリガリと大きな音を立てたり、一部の歯に大きなすり減りを引き起こしたりするタイプです。これは噛み合わせに問題があると発生しやすくなります。
歯ぎしりの健康効果
歯ぎしりには、以下のような健康効果があることが研究によって明らかになっています。
・ストレス解消効果
- ・血糖値や血圧を下げる効果
- ・自律神経の調整効果
子どもの歯ぎしりも同様に、ストレス解消の効果が大きいと考えられています。子どもの歯ぎしりを無理に止めようとすると、ストレス解消がうまくできず、別の症状が現れることもあるため、注意が必要です。
歯ぎしりの効果的な7つの対策
歯ぎしりの「良い効果」を活かしながら、「悪い影響」を最小限に抑えるにはどうすればよいのでしょうか?
1. ナイトガードの使用
ナイトガード(マウスピース)は、歯ぎしりによる歯への負担を軽減するための最も効果的な方法の一つです。就寝時に装着することで、歯の摩耗や顎への負担を大幅に減らすことができます。
ナイトガードには既製品もありますが、歯科医院で自分の歯型に合わせてオーダーメイドで作製するものが最も効果的です。自分の歯に完全にフィットするため、装着感も良く、保護効果も高くなります。
特に、歯のすり減りや顎関節症の症状がある方には、専門医による適切なナイトガードの作製をおすすめします。

2. ストレス管理と生活習慣の改善
歯ぎしりの主な原因であるストレスを管理することは、根本的な対策として非常に重要です。
ストレス解消法としては、以下のようなものがあります。
・適度な運動
・十分な睡眠時間の確保
・リラクゼーション技法
・趣味や好きなことに時間を使う
また、就寝前のアルコールやカフェインの摂取を控え、規則正しい生活リズムを心がけることも大切です。特に、就寝前2時間はスマートフォンやパソコンなどのブルーライトを発する機器の使用を控えると、睡眠の質が向上します。
3. 噛み合わせの調整
歯の噛み合わせに問題がある場合は、歯科医師による噛み合わせの調整が効果的です。特に、一部の歯が他の歯よりも高く、過剰に接触している場合は、その部分を少し削って調整することで、歯ぎしりの症状が改善することがあります。
また、歯並びに問題がある場合は、矯正治療も選択肢の一つです。当院では「なるべく歯を抜かない矯正治療」を推奨しており、最新の矯正システム「Meaw Tequnique(ミュウテクニック)」を採用しています。
噛み合わせの問題は一人ひとり異なるため、適切な診断と治療計画が重要です。
4. 就寝前のリラクゼーション
就寝前にリラックスすることで、睡眠中の歯ぎしりを軽減できることがあります。以下のような方法を試してみてください。
・温かいお風呂にゆっくり浸かる
・ ホットミルクを飲む
・アロマテラピーを取り入れる
(ラベンダーなどのリラックス効果
のある香り)
・軽いストレッチや顎のマッサージ
を行う
特に顎のマッサージは、就寝前に行うことで顎の筋肉の緊張をほぐし、歯ぎしりの軽減に効果的です。両手の指を使って、頬骨の下から顎関節にかけてマッサージしてみてください。
5. 口内環境の改善
虫歯や歯周病などの口内トラブルが歯ぎしりを引き起こしている場合は、まずそれらの治療を行うことが大切です。また、定期的な歯科検診とクリーニングを受けることで、口内環境を健康に保つことができます。
特に、歯ぎしりがある方は、通常よりも歯のダメージを受けやすいため、3ヶ月毎の定期検診をおすすめします。早期発見・早期治療が、将来的な大きなトラブルを防ぐ鍵となります。
6. 意識的な習慣改善
日中の歯の食いしばりに気づいたら、意識的に顎の力を抜く習慣をつけることも効果的です。
唇を軽く離す
→上下の歯が接触しないようにする →舌を上顎に軽く当てる
→顎の筋肉をリラックスさせる
この状態を日中、思い出したときに繰り返し行うことで、無意識の歯の食いしばりを減らすことができます。スマートフォンのアラームを設定して、定期的に思い出すようにするのも良い方法です。
7. 子どもの歯ぎしり対策
子どもの歯ぎしりは、多くの場合、成長過程における一時的なものです。歯や顎の成長に伴い、噛み合わせが変化していく中で、体が適応しようとして起こる生理的な反応と考えられています。
子どもの歯ぎしりは、永久歯が生え揃う12〜16歳頃までに自然と落ち着くことが多いため、過度に心配する必要はありません。ただし、以下のような場合は歯科医師に相談することをおすすめします。
- ・歯が著しくすり減っている
- ・顎の痛みや頭痛を訴える
- ・睡眠の質が低下している
また、小学校高学年以降の子どもの歯ぎしりは、学校生活や友人関係のストレスが原因になっていることもあります。子どもの様子をよく観察し、必要に応じて精神的なケアも行いましょう。
歯ぎしりと上手に付き合うために
歯ぎしりは単なる癖ではなく、さまざまな要因が複雑に絡み合った現象です。放置すると歯の損傷や顎関節症、頭痛、肩こりなどの健康問題を引き起こす可能性がありますが、適切な対策を講じることで症状を軽減し、健康を維持することができます。
歯ぎしりには「良い歯ぎしり」と「悪い歯ぎしり」があり、ストレス解消などの健康効果もあることを忘れないでください。大切なのは、歯ぎしりを完全に無くすことではなく、その悪影響を最小限に抑えながら、上手に付き合っていくことです。
日常生活でのストレス管理、適切なナイトガードの使用、定期的な歯科検診など、できることから少しずつ始めてみましょう。症状が気になる場合は、歯科医師に相談することをお勧めします。
当院では、歯ぎしりでお悩みの方に対して、一人ひとりの状態に合わせた最適な治療プランをご提案しています。
噛み合わせの調整や矯正治療、オーダーメイドのナイトガード作製など、総合的なアプローチで症状の改善をサポートいたします。
歯ぎしりでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。適切な対策で、健康な歯と快適な生活を取り戻しましょう。
詳しくは桜新町グリーン歯科・矯正歯科までお問い合わせください。
歯科医師 山田







